リレー小説第34回(2008/12/01)
遅くなって申し訳ありません!
色々おかしいことになってますがご了承ください。
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もう一度
―we are not human beings.
更にもう一度
―we are not human beings.
三回繰り返すと鎖発動。三体が同時に<03>よ止まれと命じることで、エノラ-元<03>-の動きが停止する筈だ。
だがそこで<01>は違和感を感じた。<02>の光の無い瞳は悲惨な戦いの場から外れた方向を見据えている、ように見える。意思疎通が可能になったというのに<04>からは一切の感情の流れは無い。
矢張り<01>は違和感を感じた。だってそうだろう。
<03>だったエノラ、生物的には彼女、そう、彼女はもう人間なのだから。
昔の仲間の声が"we are not human beings"と繰り返すのをエノラは微かにしかし正確に聞き取った。なんて彼らは悲しい事実を繰り返しているのだろうか。一発目の銃弾を目の前に崩れ落ちたスカーレットの打ち込む。彼らが三度目を繰り返すのを耳にしながら二発目の銃弾を撃ち込む。発砲された後の衝撃を手に感じたと同時にエノラは己の身体が強張るのを感じた。銃が音を立てて足元に転がる。
耳についたフレーズをエノラは無意識に呟いた。そして違和感を感じる。昔の仲間にとっては悲しいけれど事実、彼らは人間ではないから。しかし自分は人間である、自分が機動力を奪った対象である<01>がそれを肯定するかのようなことを思っているのが何故かエノラには分かった。身体の強張りが解け、足元に落ちた銃を拾おうと身をかがめる。
―止まれ!!
と三人が再び命じる。しかしエノラは支障なく銃を掴んで立ち上がった。微動だにしないスカーレットの前に再び銃を構えたところで、先程より強い止まれ!という念を感じた。それは状況が見えていない者のものでもなく、勘定を宿さない者のものでもない。<01>の強い思いにエノラは耳を傾けてみた。
―何故
―何ではこっちだ(ああもう鎖とやらは効かないみたいだけど)それ以上撃つのか
―二人は強い、まだ死んでいないかもしれない
―何で殺すんだよ
―ササヤマは二人が憎いのだと思う、存在が許せないのだと思う
パアンと銃砲が響く。エノラが三発目を撃ち込んだ。
―止めろ!
―どうして意思疎通が可能になったのかは分からないが無駄だ
―みたいだな。その子を殺すのか
―多分
―ササヤマさんとやらがそう言ったのか
ササヤマは二人を殺せ、とは言っていない。エノラは反芻した。しかしあのように憎々しげな態度で語っていた、作り出してしまったと言っていた。
―ササヤマ、貴方はどうすることを望んでいたのですか、こうすることではないのですか
エノラが持つ銃をとりまく空気がじわりと歪む。エノラは尋常でない察知能力で異変を感じ取ると後方に飛びのいた。エノラの手を離れた銃はまるで布のように空中でたわみ、スカーレットの方へ液体のように流れていった。彼女が鈍い動作でふらつきながら立ち上がった。その姿を見てエノラは自分が放った銃弾が一つも彼女に届いてないことを知った。彼女が足をつけている床は何故か陥没しているように見える。
「いかん!皆の者離れろ!」
自分が以前彼女に植えつけた能力の発動を見てとって博士は大声をあげた。<02>は何も映さない目をきょろきょろさせてどの方向に下がるべきか考えており、それを見とめた<04>が彼の身体ごと抱えて博士が立っているところまで飛びのいた。同じく博士の位置まで後退しようとして自由の利かない身体を回転させようとしている<01>をエノラは見遣り、スカーレットに視線を向け、再び<01>に戻すとその身体を掴んで残りの者のラインまで飛び去った。
突然背後からがやがやと複数の人間がやってくる気配が感じられた。<01>を無造作に下ろした(そこから普通に立つ姿勢まで戻るのに一苦労だった)エノラはその方向へ首を捻る。同じ方向を見遣った博士が「また政府軍か!」と苦々しく呟いた。姿を現した者のうちの一人が明瞭でかつ冷淡な声で堂々と言い放つ。
「クリア及びスカーレットを反逆の疑いで拘束する、及びクリアの本来のターゲットである<03>も」
そして博士、と彼が博士の方へいささか嘲笑するような表情を向けた。
「貴方のミスもアカイバの円卓まで届いていますよ」
彼らはクリアが倒れて動かないままなのを確認すると、仕事は大分楽になったな、などと言いながらスカーレットへ向けて足を踏み入れた。
「いかん!」
と再び博士が叫ぶ。
「何がいけないのです――」
という台詞はそこで途切れた。この場の状況を把握出来ていなかった新参者達は全員、目の前で騙し絵のようにズレたかと思うとスカーレットの足許に消えていった。
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*自分で設定した鎖の発動が自分に返ってきてしまった
*最早<03>でないエノラに鎖が効くのかという疑問
→意思疎通だけが出来て動作制御は不可能ということでお茶を濁します
*残念なことに私はブラックホールを見たことがありません